Telecom FreeTalk 2001年2月版


2001年2月3日 広告と記事のビミョーな関係 Part.1
2001年2月4日 広告と記事のビミョーな関係 Part.2


2001年2月3日

広告と記事のビミョーな関係 Part.1

 年が明けたと思ったら、もう2月。わずか1カ月でしたけど、通信業界は相変わらず動きが激しいですな。携帯電話はNTTドコモ503iシリーズが出たし、マイラインに関連して、固定網のサービス競争も激しくなってきました。この辺の話はあちこちの雑誌とかWebマガジンに書いているので、そちらを読んでください。

 ところで、ボクは情報収集などのために、いろいろなホームページを見ています。特に、ユーザー同士が情報交換をしている掲示板などは、読者が何を感じているのか、何を求めているのかを知る上で、非常に勉強になります。ところが、こうした掲示板を見ていると、ときどき目に付くのが「雑誌なんて広告もらってるから、書いてることはみんな企業寄りでしょ」とか「企業に検閲されてるから、悪いことは書かない」という書き込み。なかには「オレは広告の仕事してるから、よく知ってる」なんていう訳知りの書き込みも見かけます。はたして、実状はどうなんでしょうか。

 結論から先に言ってしまえば、これらの発言は「基本的にウソ」ということになります。でも、「当たってない部分がないわけではない」とも言えます。変な誤解を持たれないため、より確かな情報を読みとってもらうために、広告と記事のビミョーな関係について説明しましょう。

 まず、雑誌は基本的に本の売り上げと広告収入によって成立しています。広告が入らなくても販売部数が多ければ、成立するし、逆に販売部数が少なくても広告収入が多ければ、発行を続けることができます。このあたりのバランスは非常に微妙です。ただ、実際のところ、販売部数だけで成立する雑誌は皆無に等しいと言えます。一方、Webマガジンは少し事情が異なります。どんなにページビューが多くても広告が入らなければ、収入はゼロですから、簡単に赤字になってしまいます。インプレスのWatchシリーズのように、有料メール配信をやっても儲けを出すのは難しいと言われています。おそらく、アダルト系を除く、一般のWebマガジンで、まともに商売ができているところは数えるほどしかないのが実状でしょう。

 では、より多くの広告をもらうために、雑誌やWebマガジンが企業のために原稿を書いているかというと、そうではありません。まず、出版社は基本的に、記事を作成する編集部と広告をもらってくる広告部が独立しており、それぞれが個別に活動しています。そのため、必ずしも記事と広告は連動していません(しかも、広告部と編集部が連携できていないことが多い(笑))。製品の広告が入るからレビュー記事も掲載するということは頻繁にありますが、それでも広告主がレビュー記事を検閲したり、書き手が手心を加えるといったことは基本的にないと考えていいでしょう。特に、雑誌の場合はスケジュールがかなりタイトですから、広告主に見せようにも見せる時間すらないというのが実状です。ただし、これはあくまでもPC関連業界の話でしかありません。少し事情が異なる業界もあるのですが、ボク自身はもう関わっていないので、コメントはしません。

 また、雑誌には純粋な記事の他に、記事風に見せた広告が掲載されることがあります。この記事風に見せた広告のことを「記事広告」「広告企画」「ペイド・パブ」などと呼んでいます。一般誌などでも、広告とも記事とも取れるようなページがありますが、ページの片隅に「協力 = ○○株式会社」なんて書いてあることで記事広告であることがわかります。記事広告は記事というよりも広告に相当するもので、広告主は雑誌に掲載される前に、校正をチェックするのが一般的です。この行為を検閲と解釈することもできますが、広告主としては間違った情報が掲載されていないかどうかをチェックするために、校正を見るわけです。もちろん、広告主の意向にそぐわない内容であれば、作り直しになることもあります。

 つまり、記事、広告、記事広告はそれぞれが別のものであり、これをごっちゃにして考えると、「雑誌は企業のために記事を書いている」なんていうアホな解釈が成り立つわけです。実際にはきちんと区別されているため、「雑誌の記事は広告のために書いているわけではない」という話になるわけです。


2001年2月4日

広告と記事のビミョーな関係 Part.2

 上の解説を読んでもわかるように、通常は企業が記事を検閲するということはありません。ただ、影響がないから、編集部やライターが好き勝手に書いているかというと、必ずしもそうではありません。

 まず、上で解説したことは基本ルールでしかありません。雑誌や媒体によっては、広告をもらうために、記事を企画するところもあります。たとえば、ある出版社では「○○社は広告予算持ってるから、こういう記事をやろう」といった話から記事が企画されることがあるそうです。ボク自身はその媒体に関わったことがないので、詳しいことはわかりませんが、そういう考え方の出版社も一部にあるようです。

 また、編集者やライターが企業と癒着しているのではないかという話も耳にします。以前、NTTの話でも書いたことがありますが、企業が一介の編集者やライターに施しをしたり、特定の企業が有利になるように記事を雑誌などに書くことはほとんどありません。ただ、特定の企業の担当者と仲良くなり、その企業の記事を頻繁に書くというケースは十分に考えられます。この場合、注意が必要なのは、その書き手が本当にその企業が有利になるように記事を書いているかどうか、有利に書くことによって何かを得ているかという点です。

 有利になるように書いているかどうかは、個々の記事を見て判断するしかありませんが、歪んだ解釈をすれば、自身の看板にも傷が付くわけですから、安易に有利な記事を書くことはできません。同業のボクの目から見て「やや有利に書いてるかな?」と感じさせる方もいますが、それは本当にごく一部の限られた人々です。また、単純にその書き手が特定の企業のファンであるというケースもあり得ます。この場合、本来ならば、編集者なり、編集長なりが調整をするわけですが、ファンであることを個性として書いている書き手も居ます。こうなると、周りの人間がとやかく言うこともできなくなります。結局のところ、その記事を読みたい人は読めばいいし、読みたくない人は読まなければいいということになります。

 有利に書くことで何かを得ているかという点については、本人と企業の関係ですから、部外者は知ることができません。ただ、政治家の賄賂のように、金銭の授受があったというような話は耳にしたことがありません。ちなみに、出版社によってはこうした誤解を防ぐために、発表会などで配られるお土産(ノベルティグッズなど)すら置いて帰るというところもあります。

 企業とライターの関わりについて、注意しなければならないのは、広告やメーカーのWebサイトに自らの名前を出して、記事を執筆しているケースです。最近では個性派のライターさんも多く、企業としては広告などに原稿を書いてもらいたいと考えることもあります。しかし、こうしたケースはライターがキャラクターとして起用されているわけで、癒着というよりも通常のライター活動の一環と解釈するのが一般的です。かく言うボク自身もシャープ関連のWebサイトザウルス「MI-E1」に関する記事を書きましたが、新ザウルス一式はヨドバシカメラで予約して、自分自身で身銭を切って買いました(笑)。まあ、当たり前の話ですよね。ちなみに、ボクはザウルスもPalmもWindowsCEマシンも持ってますし、それぞれに良さがあると考えています。

 逆に、企業が掲載された記事に対して、クレームを付けるといったこともあります。クレームは、大きく分けて2つに分類できます。ひとつは記事内容が間違っているとき、もうひとつは記事内容が企業の意向にそぐわないときです。記事内容が間違っているときは素直に訂正して謝るしかないのですが、企業の意向にそぐわない記事のときは少し面倒なことになります。

 こうした場合、その出版社のスタッフが呼び出されるのですが、通常は広告部の人間が出向いて事情を説明します。それでも納得してもらえないときは、編集者やライターが直接、呼び出されるわけですが、こうしたケースはほとんどないと言っていいでしょう。ボクも10年以上、この業界で記事を書いてきましたが、過去に呼び出されて文句を言われたことがあるのは一度だけで、そのときは「テスト結果でダメだったのだから、その事実を書いたまで。文句を言われる筋合はない」と反論しました。ちなみに、その企業はその後、市場から撤退してしまいました(笑)。

 こんなところで少しは理解していただけたでしょうか。メディアにとって、広告は欠かせないものですし、広告が入らなければ、雑誌を発行することも難しくなります。だからと言って、広告主の思うがままに記事が作られてると思ったら大間違いです。広告と記事、広告主とメディアの間には、非常にビミョーな関係があるのです。一部に問題のあるメディアや書き手がが存在するかもしれませんが、逆に読者のみなさんにはそれを見抜く賢い目を養ってもらいたいというのも正直な気持ちです。


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